ゴールドコラム Gold Column
金(ゴールド)にまつわるお話:
大日本帝国海軍潜水艦「イ52」
第二次世界大戦のさなか、ドイツ軍へ物資を運ぶ日本海軍の潜水艦、イ52が大西洋で撃沈されました。
イ52の使命
潜水艦イ52は、広島県呉市で貨物用に建造され、1943年に完成しました。
定員100人弱のこの潜水艦は、1944年3月に呉市を出港します。
イ52の任務は、カフェイン、モリブデン、アヘン、キニーネ、ゴム、スズ、タングステンなどのさまざまな貨物と、
146本の金の延べ棒(=ゴールドおよそ2トン)をドイツへ運ぶことでした。
これらの物資と引き換えに、ドイツから軍事物資や軍事関連の技術供与を受けることになっていたのです。
ところが、航行するうちにも戦況は悪化。
日本とドイツは敵に捉えられないようにと計画を変更するなど画策していましたが、米軍はすべてを把握していました。
そして1944年6月22日、大西洋に浮かぶ島国カーボベルデの数百キロの沖合で、イ52は計画通りドイツの潜水艦と合流します。
しかし、その海域で待ち構えていた米海軍の艦隊の攻撃に遭い、ついに沈没してしまったのでした。
眠り続ける潜水艦
イ52の沈没した正確な位置が確認され、調査が開始されたのは1990年半ばになってからのことでした。
調査を担当したのは、アメリカの海洋研究者ポール・ティッドウェル。彼らの探索チームは1995年初めに沈没した船体を発見しました。
ティッドウェルは日本政府との長期の計画で、残骸を引き上げて日本へ返す代わりに、引き上げた金塊の取り分を費用としてティッドウェルに渡すということで合意。
その後、実際に一部の遺品や積み荷が引き上げられ、日本に送られたそうです。
しかし、イ52が沈んでいるのは水深5200メートルもの深海。
調査や引き上げには相当な資金が必要とのことで、現時点でもまだ海の底なのだそう。
海に沈んだままのゴールド(金)も気になりますが、戦後70年、一日も早くすべての遺品がご遺族のもとに届けられる日が来ると良いですね。
そしてもう二度と、このような悲しい出来事が起こりませんように。
参照文献
『絶対に見られない世界の秘宝99』
日経ナショナルジオグラフィック社)
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